御殿山の家
 
御殿山の家は、ご両親の住む母屋に隣接した若夫婦のための住宅の建て替えである。東西に長い敷地であるが、車の出入りの関係で、使える部分は西寄りの既存住宅の建っていた場所に限られた。南側に隣接する母屋は、入母屋造りの背の高い家で、西側の竹やぶと共に、敷地への採光を阻害していた。地盤も母屋より低く湿気の多い土地であった。
このような条件から、基礎を高めに設定した上で、個室群を下階に配置し、LDKなどの共用室を上階に配置する案が必然的に提案された。
共用室を上階に持ってきても、隣接する母屋のせいで南側からの採光はあまり期待できない。そこで、上階の共用室をワンルームとして意識し、その中央にトップライトを取り、採光することにした。トップライトからの光は、建物中央に設けた階段を介して、下階まで届く。通風と共に建物を貫通する光の道が出来た。
共用室の天井は、西側の竹やぶから、東側の御殿山の緑にむかって緩やかな勾配で上昇する。西と東の窓で切り取られた景色は、敷地を特徴付ける二つの緑を結んで、建て込んだ古い集落の中にあることを一瞬忘れさせる。
ご主人は、アウトドアが好きで、ダッチオーブンの料理やお菓子作りをされるという。二人の娘さんと共に家族全員で立つことの出来る台所を、杉集成材(Jパネル)を使って特注した。トップライトの下のキッチンは、位置的にも機能的にも、共用室の中心となっている。

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