ベルツリー平和台
企画・マーケティング
今回の賃貸共同住宅の設計では、計画に先だって施主も含めた企画チームが組織され、経営・募集のノウハウから仕上げ・コストプランニングについてまで、それぞれの意見・情報を出し合った。周辺の状況や家賃相場を分析し、長期的な経営方針の検討がおこなわれた。そこから、住戸は、新婚世帯をターゲットに、家賃の単価から40平方メートル程度とすること。“N+LDK”でしか表せない住宅情報に対応して2LDKの間取りを設定しつつ、多様な生活形態を満足できる可変性のあるプランニングを行うことが確認された。

中庭
敷地周辺は、戦後に開発された住宅地で、狭い道路に木造住宅が密集した地域である。以前1戸建の住宅が建っていたであろう敷地は、駐車場として使用されていたが、道路以外の三方は、戸建住宅が敷地いっぱいに建てられていた。周囲の住宅への配慮から、建物は、北側にアプローチをとり敷地の南よりに配置した。各住戸への採光は、道路側と南西角の庭よりとるよう配置された。この庭は、隣接する住宅にとっての中庭となった。

メゾネット
周辺の町並みは木造2階建の住宅が中心なので、階数は3階建とし、階高を押さえることで、出来るだけ周囲に溶け込ませることを意識した。しかし、建物高さを押さえる分、延床面積は少なくなるので、建敝率いっぱいの平面をとる工夫がされた。すなわち,1フロアーに1.5戸分の面積となるのでフラットタイプとメゾネットタイプを組み合わせて2・3階で3戸の住戸を計画した。1階では、ワンルームタイプの住戸1戸とファミリータイプの戸数分の駐車スペースをとっている。

柔らかい壁
賃貸住宅の場合、多種多様な入居者が対象になるので、画一的な平面型になりがちである。狭いスペースを住みこなしてもらう為に、可変性のあるプランニングをローコストに作ることを試みた。新婚世帯向けという設定なので、各個室間のプライバシーの問題はある程度無視出来ると考え、LDKから個室へのヒエラルキーの差から、大きな引違い戸と取り外し可能(もちろん収納場所有り)のケンドン式の建具を組み合わせた可変間仕切りシステムが考案された。

入居者
竣工前の入居者募集にも関わらず、数日のうちに入居者は決定した。なかには、半年先に挙式予定のカップルも半年間の家賃を無駄にして予約された。可変的な間取りのおかげで、入居者のニーズに対する募集の間口が広がり、施主にとっても優良な入居者を選択できるゆとりを生む結果となった。

写真撮影・新極 求
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