五條の家
冨有柿の産地として有名な奈良県五條市は、奈良県南部の山間に位置し、温暖な関西の中では、冬の寒さが厳しい地域です。
五條の家の敷地は、北向きの斜面に雛壇造成された宅地を2区画使って計画されました。斜面地の最も高い場所にあるので、外観が4面共周囲からよく見えます。どの面から見ても豊かな表情になるよう、外部仕上げの違う3つの立体の組み合わせで外観を構成しました。
計画の最初の段階から、冷暖房の方式をどうするかが検討されました。傾斜地に建設する関係でRC造の地階の上に、木造在来工法の2階建てを乗せる構成としましたが、地下の躯体と1階の床の間にできる空間を利用して床下暖房を行うことを提案しました。温水でヒーターを発熱させ暖気を対流させる床下暖房なら、床暖房が苦手な無垢の床材にも対応出来ますし、地下の躯体を暖めることで地階への輻射暖房も期待できます。外断熱通気工法と断熱サッシで断熱性能を高めるとともに、柱梁を露出させた真壁の室内と無垢の杉材を多用した室内の仕上げで、暖かみのある室内空間を実現しました。
斜面の頂上にあるので、敷地北側には、金剛山系の雄大な眺めが得られます。平面計画では、リビングをあえて北側に持ってきて、テラス越しに山並みが見えるように配置しました。断熱性能が良いので床下暖房の熱が吹き抜けを介して室内全体に行き渡ります。大きな吹き抜けは、熱損失が心配されますが、建物全体の断熱性能により、この家全体に暖房が行き渡るので、かえって利点となっています。
南側には、和室や主寝室、子供室を配置し、リビングとは違う快適さを作り出しています。
パブリック空間と共に北側に配置したテラスですが、逆光になる南向きの景色より、日差しと共に移りゆく北面の景色の美しさは、初めて訪れる人には、驚きをあたえるようです。毎年のお盆に行われる花火大会では、この雄大な眺めのテラスは、特等席となるでしょう。

写真撮影・新極 求
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