和泉の家
住宅を建てようと思う人の大部分は、ハウスメーカーの住宅展示場をたずねるのではないだろうか。そこで見る住宅は良く出来ているのだが、どこか、よそよそしく、例えて言うならYES-NOで選択していった占いの結果みたいで、自分でのぞんだ家には違いないのだけれど、どこか違う感じがするはずである。
「和泉の家」の施主は、子供のいない夫婦だけの家庭である。何度か、展示場を見て回られたが、メーカーの住宅には少しも魅力を感じなかったとお伺いした。特殊な家族構成だけでなく(家族構成はどんな場合も特殊だ)、本当に住みたい家と考えれば考えるほど、メーカーの住宅から離れていったそうである。
今は、元気で働き盛りのご夫婦だが、これから老後も見据えて、終の棲家となる家を望んでおられた。仕事を終えて家に帰るとほっとする家、自分の感覚にあった家、そんなキーワードが自然に思い浮かんだ。
土地探しから始まったプロジェクトだったが、分譲の宅地に当選したことから急ピッチの作業が開始された。施主と設計者の双方の思いを出しあう内に、設計案はJ案まで練り直された。
「朝日を感じて目覚めることが出来る寝室」「開放感のある居間」「ゆったりくつろげる和室しかも居間と一体に!」「機能的で無駄の無い家事動線」
これらの要望と、その背後にある生活感を空間化していくうちに自然と設計が推敲されたと言うべきだろう。
設計の合間に、納材してもらう吉野の山まで、原木を見に行ったり、これまでアルキメラが設計した住宅を見てもらい、素材使いについて説明する機会をもった。
設計方法、素材の選択、施主参加の作業などアルキメラの目指す家つくりが最も良い形で結実した住宅である。

写真撮影・新極 求(一部写真除く)
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