御陵の家
 
「御陵の家」は、築40年程の住宅の建て替えです。立て替えを機に、ご両親と独立していた息子さんとの二世帯住宅とする事になりました。
二世帯住宅の形はいろいろ有りますが、「御陵の家」では敷地に余裕があった為に、二世帯が左右に完全に分かれた構成になりました。法律上は、二世帯住宅ではなく長屋と呼ばれる形です。意識した訳ではありませんが、面積もちょうど同じになりました。
約100坪の広さのある敷地ですが、接道は東南角の2mだけで、いわゆる旗竿敷地の旗の部分だけのような敷地です。従って四周は、隣家に囲われています。採光を確保しつつプライバシーを守るため、基本的な構成は中庭を囲んだ凹の字型としました。親子それぞれの居間から中庭が見えるのですが、それぞれの視線が交差しないように、親邸からは東向き、子邸からは南向きに中庭が見えるよう90度角度をずらせて配置しました。
室内では繋がらないそれぞれの家ですが、この中庭のデッキでは繋がっているので、この中庭が二世帯を繋ぐ中心でもあります。
吉野杉をふんだんに使った室内は、両家ともに和風のテーストを感じさせる仕上がりになっています。室内の仕上材では、差がない両家ですが、子邸では南向きの吹き抜けを通して光が部屋の奥にまで差し込み明るい雰囲気に、親邸では、光の量を調整し、しっとりとした落ち着いた雰囲気になるように意識しました。
そんな両世帯の違いは、敷地の東西いっぱいに配置した黒い鋼板張りのマスタースペースから、凹の字の二つの出っ張り部分が土壁(親邸)と白壁(子邸)として際だつように表現されています。
設計段階から何度も打ち合わせを重ねたので、台所や納戸等の収納には、それぞれの生活の知恵が生かされました。暮らし方がそのまま平面となった親邸の台所廻りや、既製品の収納ボックスや整理籠類で見事にまとまった子邸の納戸等、教えられる事の多い設計打ち合わせでした。
中庭のシンボルツリーを中心にして、つかず離れずの成熟した関係の二世帯住宅が実現したと思います。

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